医学・看護学教育センター
Education Center
for Medicine and Nursing
2022年9月6日 / イベント
2022年度第2回輪読会を終えて
今年度2度目の輪読会は、夏休み期間の開催であったことから、参加者が集まるかどうか懸念され、緊急アンケートを行って、10名以上の参加を見込めたことで開催にこぎつけました。実際には当日参加の方も含め、14人が参加してくれ、活発な討論も行われました。1年から4年まで、すべての学年が参加してくれたのがよかったと思っています。
前回に続き、最初に司会者の方から、Abstract の読み合わせを提示させていただきました。わかりやすい英文だったので、解説なしに理解できた人も多かったのではないかと思います。学生さんの意見も聞きつつ、続けていこうと思っています。
発表は、4年生のお二人でした。はじめに、徳田裕人さんが、今年の7月にSciencに発表されたばかりの論文 “Connectomic comparison of mouse and human cortex” を紹介してくれました。コネクトーム研究による解析をマウスとアカゲザル、ヒトの種間で比較したもので、マウスとサルやヒトの脳の大きさ(ニューロンの数)には大きな違いがあるが、錐体細胞への入力量には大差なく、双極ニューロンの抑制性入力が増加、殊にIN-to-IN ネットワークが増加していて、この回路の転換が進化のカギになっていることが示唆されたという報告でした。これまでに分かっていそうで、その真相がはじめて明らかになった、非常に興味深い、また科学の深淵を顧みたような論文の膨大なデータをわかりやすく発表してくれました。
2人目は昨年の発表に続いて吉村碧海さんが、その続編となる研究結果、JOURNAL OF CLINICAL ONCOLOGY の“PD-L1 and PD-L2 Ge
netic Alterations Define Classical Hodgkin Lymphoma and Predict Outcome” を紹介してくれました。これは、これまで解析が難しかった古典的ホジキンリンパ腫におけるPD-L1及びPD-L2 変異につい
て、FISH法を用いるこことで詳細に調べた報告でした。この報告によりPD-1を介して免疫逃避をするリンパ球系の悪性疾患の特定につながり、再発を繰り返したり導入療法に反応しなかったりという古典的ホジキンリンパ腫の中でも重篤な患者に、新しい治療法の
福音をもたらす可能性を示唆する報告であったと思います。低学年の人にもわかるような、丁寧な発表が印象的でした。
発表の後には、それぞれの演者に対して多くの質問がなされ、それらは、論文の理解をさらに深めることができる良い質問ばかりでした。
こうして、夏休みに集まってくれた学生さんたちは有意義な時間を過ごしてくれたものと自負します。
2学期以降の輪読会では、決して敷居を高くしてしまわず、低学年でも積極的に参加できる輪読会を目指しつつも、高学年にも楽しんでもらえる内容の濃い会にしていきたいと思います。
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