医学・看護学教育センター
Education Center
for Medicine and Nursing
2024年度 第4回 輪読会を終えて
去る、1月24日 (金) 16:20~、2024年度の最終となる 第4回 輪読会が開催されました。
6階サイエンスカフェを会場とし、1年 7人、2年 2人、3年 4人、の計13人が参加してくれました。毎年、この時期、試験直前であったり、レポート提出期限と重なっていたりして、参加者が低迷します。この時期の輪読会としては最も多くの方が参加してくれました。
最初に、論文Abstract の読み合わせを行いました。今回は、インフルエンザウイルス株に対するサブタイプの偏りが宿主の遺伝により強く作用し、インフルエンザ株間の抗体応答の改善が、鳥インフルエンザHAに対する抗体応答の大幅改善につながるという発見について示しました。ほぼ平易でなじみのある単語であったので、読むのは難しくなかったと思います。読み合わせも会を重ね、英語抄録の読み方が身についてくれていたらうれしく思います。
今回の発表者は、3名で、一人目は1年生の野村明生さんが、Schultz WM, et. al. Socioeconomic Status and Cardiovascular Outcomes: Challenges and Interventions. Circulation. 2018 May 15;137(20):2166-2178.を発表してくれました。これは、社会経済的要因と心血管疾患との関係を統計的に解析した報告で、これまでにない系統の論文でした。身近でかつ深刻な問題であるにもかかわらず、数値化して初めて実証された内容は、非常に興味深いものでした。野村さんは、しっかり読み込み、わかりやすく説明してくれました。
二人目は1年生の 古田 有希葉 さんで、Krishna S, et.al. Glioblastoma remodeling of human neural
circuits decreases survival. Nature. 2023 May;617(7961):599-607. という、Natureからの論文で33ページにわたる大作に果敢にチャレンジしてくれました。グリオーマが神経回路をリモデリングし、その機能的連結にTSP-1が関与し、浸潤性増殖性の憎悪、更には患者の生存率や認知能力に密接にかかわること、TSP-1阻害がグリオーマの進展阻止につながる可能性について、複雑で多岐にわたる実験の結果をつないで、わかりやすく説明してくれました。1年生でこの論文を読みこなすとは流石です。
三人目は3年生の 金﨑文香さんがHaase VH. Hypoxia-inducible factor-prolyl hydroxylase inhibitors in the treatment of anemia of chronic kidney disease. Kidney Int Suppl (2011). 2021 Apr;11(1):8-25.という、慢性腎臓病の合併症である腎性貧血の経口治療薬であるHIF-PH阻害薬の作用機序や効果、安全性についての治験結果をまとめた報告でした。上級生らしく、病態と治療にかかわる論文を取り上げてくれ、見やすいスライドを用いて、低学年にもわかりやすいよう、ゆっくりと優しい言葉で説明してくれたので、1年生にもしっかり伝わったようでした。
最後に参加者に感想を聞いたところ、有意義だった、刺激を受け自分も頑張ろうと思ったなど、ありがたい意見を多くいただきました。論文を読む、スライドを作る、発表する、研究に生かす、それらは時間もかかるし、簡単なことではありませんが、達成感を得ることができますし、人に刺激を与え、輪を広げていくのだということを強く感じました。また、参加者に対するアンケートでは、年4~5回の開催を希望する人が多く、開催は4月から7月と、10月、11月が参加しやすいことなどが分かりました。内容面での希望としては、その年のノーベル賞受賞にかかわる研究など話題性の高い論文を紹介してほしい、英語でのスライド作成と英語での発表を推奨するとよい、など、貴重な意見をいただきました。これら意見を尊重し、学生さんのニーズに合った、参加しやすく、参加してよかったと思ってもらえる輪読会を、来年度も続けていきたいと思います。
輪読会の開催にかかわってくださった多くの方々に深く感謝申し上げます。
文責:谷浦
**********************************************************
©2021 滋賀医科大学 医学・看護学教育センター